アネックス(LACモービル)のように、エアコン搭載仕様を選べるビルダーが当たり前になってきている。エンジンを止めたまま涼しく眠れる車は、身近になりつつある。では、その先には何があるのか。猛暑の被災地、ドイツ、そして日本で増える「泊まれる場所」から考えてみたい。
猛暑の被災地で、車が果たした役割
2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、停電や断水が続く酷暑の中、多くの被災者が避難所の外で車中泊を続けた。停電で冷房が使えないという声も上がっていた。
その被災地で、キャンピングカーが動いた。日本RV協会は会員企業のキャンピングカーの貸与を決め、医療系NPOや水資源機構に提供した。日本特種ボディーが無償貸与した2台は、猛暑のなかで活動する支援スタッフの体調管理が課題となる現場で、空調の効いた車内が休憩・宿泊・食事の場所として使われた。
こうした動きを支えるのが、平時からの約束だ。協会が自治体や団体と結ぶ災害協定は、2026年7月時点で全国33件に達している。防災を目的にキャンピングカーの購入を検討する人が増えているという報道も、以前からある。空調と電気を備えた車は、レジャーの道具であると同時に、いざというときの備えにもなる。そう考える人が増えても不思議ではない。キャンピングカーに限らず、乗用車で車中泊をする人にとっても、電源と空調をどう確保するかは同じ課題だ。
ドイツに見る、「泊まれる場所」の厚み
車が涼しくなっても、停める場所がなければ眠れない。その当たり前を、ドイツの数字が教えてくれる。
ドイツでは2025年4月時点で、100万台を超えるモーターホームが登録されている。業界団体CIVDの分析でも、2025年初めに100万台を超える見通しだった。日本のキャンピングカー国内保有台数は、2025年に17万3000台を超えた。統計の定義が異なるため単純比較はできないが、人口が日本より少ないドイツのほうが、約6倍の台数を抱える計算になる。
台数を支えているのは、受け皿の存在だろう。ドイツには、キャンピングカー専用の車中泊スペース「シュテルプラッツ」があり、給水や汚水処理の設備を備える場所も多い。料金は場所によって幅があり、自治体運営で電気・水道込み10ユーロ前後の例から、観光地の30ユーロ台まで様々だ。車の数と、泊まれる場所の厚み。この二つは、おそらくセットで育ってきたのだろう。
日本でも、泊まれる場所は増え始めている
日本RV協会認定のRVパークは、2025年8月の発表で563件だった。2026年9月末には706件になっている。温泉や旅館、道の駅、遊園地などに隣接する形で広がっている施設だ。ベストカーWebは、キャンピングカーのほか、車中泊仕様のミニバンやSUVで遠出する人にとっても、RVパークの存在感が増していると紹介している。先日取り上げたローソンのRVパークも、2026年7月17日から埼玉・静岡・愛知に広がり、千葉の10店舗と合わせて27店舗になった。
涼しく安全に休める車と、安心して泊まれる場所。どちらか一方では、車中泊は「その場しのぎ」のままかもしれない。両方が揃ったとき、車中泊は一部の人の趣味から、暮らしや備えの一部へと変わっていく気がしている。ドイツの数字を眺めていると、そんな風景が日本にも広がってほしいと素直に思う。ただ、場所が増えるほど、使う側のマナーも問われる。車と場所、そして使う人。その三つが育っていくことを願っている。
出典
出典:アネックス公式サイト・価格表(2025年12月版)、日本RV協会リリース・広報誌、熊本日日新聞、LOGISTICS TODAY、CIVD、KBA統計、camperchamp、ベストカーWeb ほか